ホログラフィック光学エンジン
ホログラフィック光学エンジン(図1)は、ホログラフィによりお客様のレーザー加工機の性能を加速させる装置を意味し、自動車のエンジンに由来する造語です。ホログラフィック光学エンジンは、レンズ・ミラーなどの光学素子と、カメラ・空間光変調器(SLM)の電子機器から構成され、これらがモジュールとして一体化されています。よって、お客様のレーザー加工機へモジュールを挿入するだけで、装置を簡単に実装することができます。弊社が、お客様のレーザー加工機に合わせて、最適な光学素子の選定やモジュールの設計、および組み立てを行うため、特別な専門知識や技術は必要ありません。ホログラフィック光学エンジンの実装により、以下のレーザー加工の「高速化」と「高精度化」が同時に達成されます。
図1.ホログラフィック光学エンジンの試作機
- レーザー加工の高速化
- 多点集光ビームの生成(2次元,3次元パターン(図2))
- 成形ビームの生成(スーパーガウシアンビーム、リングビーム、ラインビーム、ベッセルビーム(図3)、ラゲールガウスビーム)
- 生成ビームの可変な切り替え
これらは、SLMに表示された計算機ホログラム(CGH)により実現されます。特に、任意の成形ビームの生成やその可変性は、多品種少量生産が求められる将来のモノづくりにおいて、多様な加工形状(例えば、マーキング、貫通孔径の制御、孔のアスペクト比の制御、ラウンド形状を有する切断面など)のニーズに対応できる優れた特徴となります。
図2.3次元多点集光ビームによるガラス内部の一括加工 図3.ベッセルビームの焦点深度の調整
- レーザー加工の高精度化
- 生成ビームパターンの強度均一化(図4)
- 収差補正(図5)
- ビームスタビリティの安定化
これらは、カメラを用いたビームモニタリングにもとづくCGH設計(フィードバック制御)により実現されます。一般に、レーザー加工機が設置される製造現場は、振動や温度変化にさらされ、理想的で安定した環境でない場合がありますが、その様な環境下でも高精度なレーザー加工を可能にします。
図4.CGHのフィードバック制御による生成ビームパターンの強度均一化
図5.CGHのフィードバック制御による生成ビームパターンの収差補正
CGH設計ソフトウェア
計算機ホログラム(CGH)の設計ソフトウェアに関するサービスを、クラウドサーバー(アマゾンウェブサービス(AWS))経由でご提供します。これにより、お客様のコンピューターへの面倒なソフトのインストールや、開発環境の構築、およびソフトウェアの更新・配布が不要になります。ソフトの使い方は簡単で、光学やプログラミングに関する専門知識は不要です。生成したいビームパターンの情報(csvファイル)をWebブラウザを使って送信するだけで、自動でCGHを計算して送信してくれます(図6)。インターネット環境さえあれば、世界中のどこにいてもCGH設計が可能です。お客様のレーザー加工ニーズに合わせて、ソフトウェアは多様なビームメニューを用意しています。
セキュリティの観点から、お客様の生成ビームパターンの情報をAWS等のクラウドサーバー経由で扱うことが難しい場合、お客様の社内や研究室内にサーバーを構築することが可能です。また、研究開発用にソフトウェアライブラリをご提供することも可能です。これらは、ご要望に応じて対応できますので、ご相談ください。
図6.CGH設計ソフトウェアの動作画面
事業の概要
図7は事業の概要を示します。図に示されるシステムアーキテクチャにより、お客様へのホログラフィックレーザー加工技術の実装が容易になります。弊社は、お客様のレーザー加工機(図中の黒枠)に、ホログラフィック光学エンジン(図中の青枠)と、そのソフトウェア(図中の緑と赤枠)をサービスとして提供します。レーザー加工機とホログラフィック光学エンジン、およびサーバーには、それぞれ独立したコンピューターが配置されます。ネットワークを介した制御コマンドを用い、マスター(レーザー加工機)からの要求に応じて、各コンピューターが同期しながら、計算機ホログラム(CGH)の設計や更新、および空間光変調器(SLM)へのCGHの表示を行います。
図7.事業の概要